【いまココ見とけ!ビジネスコラム特別号 「セミナー・研修の提供側から考えた「反転学習」の効果と可能性 その1」】

セミナーや研修は、「受講したときは良いが効果が続かない、役に立たない」など、人材育成担当者の方から、そのような評価を受けてしまうことが間々あるのが現実です。

これは、内容に依るところもありますが、学びの提供方法、集合研修やeラーニングなど、短期間に知識やスキルを詰め込む方式で提供される場合が多く、受講者がそれを消化できず、本当の意味での「習得」ができにくいことにも、大きな原因の一つがあると考えられます。

本来、知識やスキルを「習得」するためには、継続して学習することが必要であり、効果が高かまることは、みなさんも異論がないところではないかと思います。
学んだ情報を、自分の中で咀嚼した上で理解する。そして、それをビジネスや生活の場で実際に行動することで、理解があっているかを再考し、さらに行動を重ねる。これを繰り返すことで、知識やスキルは徐々に深まり、「知恵」として身についてくるのです。

では何故、今までセミナーや研修の手法として、「継続」した学習方法を提供できなかったのでしょうか?
昨今、講師が一方的に知識を提供する「講義型」から、受講者自ら課題に取組み、その内容をディスカッションするなど、セミナーや研修の提供方法も変化していますが、短期間で詰め込む方式には変わりません。またeラーニングにおいては、講義とテストの組み合わせですが、これも同様です。

その原因は、研修を実施する「コスト」と、受講する「時間」に、大きな問題があると考えられます。

企業内で開催される研修の多くは、講師と多くの受講する方を同じ「時間と場所」に集めるため、一時期に費用と実施のための業務が発生します。その仕組みで学習を継続させる場合、同様な費用と作業が伴い、受講者の時間も拘束するため、頻繁に実施することは出来ません。そのため研修後の学習は、受講者各人に委ねられることになり、職場に戻ってしまうと実務に追われ、継続することが難しく、学びが続けにくいのが現実となっています。

しかし、長らくこのような問題を抱えていましたが、テクノロジーの進歩とともに、社会インフラが整備され、利用コストが低減されてきたことで、解決できる手法が広まりつつあります。

その一つが「反転学習」です。

これは決して目新しい学習方法ではなく、基本知識はデジタル教材等により、受講する方の好きな時間と場所、スタイルで学び、その後に集合型学習にて、講師や他の受講者とコミュニケーションをとりながら、「知識」を「知恵」にかえていくという学習方法で、授業と宿題の役割を「反転」させたため、そう呼ばれています。そして集合型学習の後にも、通信インフラを利用し、学習を継続するというところも含まれています。

「反転学習」における集合型学習では講義の代わりに,学んだ知識の確認やディスカッション,問題解決学習などの協同学習により,学んだ知識を「使うことで学ぶ」活動を行います。
この学習方法により、受講者の学習意欲を向上させ、知識の定着を促すことで、実際のビジネス現場で活躍できる人材育成に効果が高いと期待されているのです。

それでは具体的に「反転学習」の期待されているメリットについて、簡単に説明します。

まず一に、学びの品質を向上させることができることです。

集合型学習によるセミナーや研修は、基本知識とその活用方法を短時間集中で提供するため、受講者の理解度の格差が大きく、ある方には「もの足らない」、別の方には、「難しすぎる」という極端な状況となります。

一方「反転学習」では、基本知識を直前ではなく、事前にデジタル教材等で学んでもらうことで、理解度の格差も小さくなる可能性が高くなります。

そして最も大きな特長は、基礎知識のデジタル教材をクラウドなどプラットフォームから学ぶ方式を前提とすれば、受講者各人の進捗や理解度を把握することができるため、より効果的な指導が可能となることです。
あわせて、集合学習に参加する受講者にも、事前に相応の学びを求められるという前向きなプレッシャーになります。

また、デジタル教材の受講ログを細かく取得すれば、部分での学習難度や理解度も分析することで、教材の改善箇所も明確になり、引いては学習全体の品質向上にもつながります。

第二に、「時間」のメリットです。

従来の集合型学習は参加できる人数も上限もあり、基本知識解説の部分は多くの時間を必要としますので、1日の拘束時間も長くなります。

「反転学習」では、基本知識解説は動画などで提供するため、受講人数の上限は、原則ありません。
集合学習でも、基本知識があるためグループワークなども効率的に進められ、また受講各人の不明点や深く学びたい箇所がある程度明確になっていると予測されますので、短時間で開催することも、インターネットを介した双方向通信で参加方法もし易くなると考えられます。

そして、この「時間」を効率的に使うことで、「短縮」することは、学び提供する側、講師だけでなく、当然、学習する受講者や研修を企画する側にも、大きなメリットになります。
ご存じの通り、「働き改革」などで長時間労働が問題視されており、今まで以上に社員の労働に対して責任を強く求められ、集合研修のように、移動時間も含めると多くの時間を拘束するものは、開催が難しくなってきています。

「反転学習」では、基本知識は動画等で、受講する方の好きな時間と場所、スタイルで学ぶ環境を提供しますので、決まった時間での拘束も少なく、社員の方が勤務時間中に、自分の都合の良い、仕事の合間や移動時間で習うことができます。
その後に集合研修にしても、短時間で実施が可能となり、遠隔地での通信での参加も可能となれば、時間面だけでなく、コスト的にも負担が減るはずです。

以上のようなことから、ビジネスパーソン向けの学習方法として、広がりはじめているのです。

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