＜withコロナ時代のM&Aと事業譲渡【1】＞　新型コロナウイルスの影響でM&A事業はどう動く？

新型コロナウイルスの感染拡大は、あらゆる業界に影響を及ぼし、長期化すればするほど、事業を継続できない業者が増え、閉店や倒産が相次いでいます。先行きが見えない長い不況のトンネルの中で、市場の落ち込みと同様に、活気が失われているかと思われているM&A業界は、意外にも活発な動きを見せています。このコロナ禍において、M&A業界はどのような動きを見せているのでしょうか。M&A業界が受けている新型コロナウイルスの状況や「買い」に関するポイントを見てみましょう。

新型コロナウイルスの影響で倒産しやすい業種と影響を受けない業種

新型コロナウイルスは、市場にどのような影響を及ぼしているのでしょうか？コロナ禍で倒産しやすい業種、しにくい業種を見てみましょう。

●新型コロナウイルスの影響で倒産しやすい業種
新型コロナウイルスは、多くの業種において、倒産や閉店を追い込み、その影響は計り知れません。市場調査リサーチ企業の調べによると、コロナ禍の影響で倒産リスクが大きい業種は、2020年10月の段階で以下通りとなります。

・飲食店(居酒屋/大手レストランチェーン)
・ホテル/旅館(観光業界)
・アパレル/雑貨小売店
・建設/工事業
・食品卸

特に、飲食店や宿泊施設の倒産リスクは、緊急事態宣言の影響も大きく、2021年に入ってもまだ不穏な広がりを見せています。何百年続く老舗飲食店や老舗旅館などの倒産も相次ぎ、事態の深刻さがうかがえます。

●新型コロナウイルスの影響を受けない業種
新型コロナウイルスの影響が直撃している業種がある一方で、新型コロナウイルスの影響が少ない業界もあります。

・製薬業界
・保険業界
・IT関連企業
・ネット通販/ECサイト業界

例えば、ワクチンの開発や新薬などの開発が期待されている製薬業界、こんな時世だからこそ需要が高まる保険業界などの他、リモートワークをサポートするIT関連企業や、ネット通販などに強いECサイト業界などは巣ごもり需要が高まり、業績を伸ばしている例もあります。

新型コロナウイルスの影響でもM&A業界は「買い」の流れに

新型コロナウイルスの影響を受けない業種があるとしても、日本経済が不況の最中にあることには変わりません。しかし、そんな状況下であってもM&A業界は「買い」の機運が高まっています。その傾向は下記のようなタイプに分かれます。

・衰退する業種に投資することをチャンスと捉えているタイプ
・アフターコロナの市場に期待して投資するタイプ
・事業譲渡で売り手を救済するためにM&Aするタイプ

中でも、事業譲渡タイプの救済型M&Aは、コロナ禍向きのM&Aとして注目を集めています。

コロナ禍ではどうして「事業譲渡タイプ」が「買い」とされているのか？

コロナ禍でも特に「買い」とされている事業譲渡M&Aの対象や傾向とについて、まとめてみました。

●「買い」の対象は慢性的に後継者不足だった中小企業
世界に通じる高い技術を持ち、希少性の高い事業を取り扱っていることが多い日本の中小企業の多くは、かねてより後継者不足に悩んでいました。それでもコロナ以前は、赤字債務超過でもなんとか営業を維持できていましたが、コロナ不況で経営の維持がままならなくなり、倒産に追い込まれるケースが増加しています。事業譲渡タイプのM&Aなら、売り手の債務を請け負うことはなく、事業のみを引き継ぐことが可能なため、売り手は事業の継続ができ、買い手は、技術やブランドを手にすることが出来るため、買い手として名乗りを上げる企業が増えているのです。

●買い手に有利な買収となる傾向にある
コロナ禍では、平時よりも買い手に有利な価格での買収も可能となるため、買い手にとってもメリットが大きいことが特徴です。実際に、M&A仲介業者へ、売り手買い手からの相談件数は増加しており、事業譲渡タイプのM&A需要の高まりがうかがえます。

●コロナ禍をビジネスチャンスとする買い手も
一方で、コロナ禍による環境の変化をビジネスへと転換しスタートアップして、成功を収めている例もあります。海外では「コロナテック」と呼ばれるもので、既存の事業と既存の事業を結び付けて新たなイノベーションを起こします。この「既存の事業」×「既存の事業」に、事業譲渡のM&Aが有効とされており、業界の地殻変動の起爆剤となると、注目している買い手も存在します。