<自動車業界を大きく変える「CASE」に迫る!【3】> CASEの「Autonomous」自動運転車はどこまで進化したか?

CASEの「A」を表す「Autonomous」は、「自動運転・自動運転車」を意味します。「CASE」を知らなくても「自動運転車」を知っている人は多く、自動運転車をきっかけにCASEを知った、という人も少なくありません。一般認知度も高く、CASEの取組みの中でも期待値の高い「Autonomous」とは何か?Autonomousの進捗はどうなのか、をまとめてみました。

 

自動運転車とは?

「Autonomous Car」とも言われる自動運転車は、人間が運転しなくても自動走行できる自動車です。条件としては、制御システムが「自律型」であることが要件となっています。ここでいう自律とは、行先を指定するだけで、カメラ、レーダー、LIDAR、超音波センサー、GPS等で周囲の環境を認識して走行ができる状態を指します。

●公道以外の自動運転車はすでに実用化されている
自律型の自動運転車は、条件だけ見ると遠い未来の話ようにも思えますが、海外の鉱山や建設現場などでは、予め設定されたルートをパトロールする無人運行システムが搭載された自動運転車が、実用化されています。鉱山や建設現場などの自動運転車には、日本のコマツやキャタピラーも参入しており、公道以外の限定された場所で活躍する自動運転車の販売を拡大しています。

●公道で走行できる自動運転車は実用されていない
自動運転レベル4、またはレベル5に相当する完全な自動運転車は、2019年の段階で市販されていません。現段階では、「限定的な環境下もしくは交通状況のみで自動運転ができる」レベル3の自動運転車が市販されています。レベル4やレベル5相当の自動運転車が市販されていない理由の一つに、国際道路交通の発達及び安全を促進することを目的とした「ジュネーブ道路交通条約」が、関係しています。ジュネーブ道路交通条約では、「常時人間の運転が必要である」と定義されているため、完全自動運転車が公道を走行するには、法的な規制がされている状態となっています。

一方で、日本やアメリカは未加入ですが、多くの欧州諸国が加盟している「ウィーン道路交通条約」では、2014年に「人間によるオーバーライドと自動運転機能のスイッチオフが可能であれば規制対象としない」と法改正され、現状「レベル3までは規制対象としない」ということになっています。自動運転に関しての法規制については、自動運転車の普及に際し、交通事故の減少や渋滞削減、二CO2削減などのメリットも多いため、国連においても、国際基準の改正を含んだ、自動運転車実現の国際基準作りが進められているとのことです。

 

自動運転車の定義について

自動運転には、定義がありレベルで段階的に記されています。国都交通省自動車局の「自動運転車の安全技術ガイドライン」によると、自動運転の定義は以下のようになります。

●レベル0 自動運転なし
ドライバーが一部又はすべての動的タスクを実行。
安全に係る監視、対応の主体はドラバー。

●レベル1 運転支援
システムが縦方向、または横方向のいずれかの車両運動制御のサブタスクを限定領域において実行。
安全に係る監視、対応の主体はドライバー。
例:衝突被害軽減ブレーキなど

●レベル2 部分運転自動化
システムが縦方向及び横方向の車両運動制御のサブタスクを限定領域において実行。
安全に係る監視、対応の主体はドライバー。
例:アデプティブクルーズコントロール(ステアリングアシスト付き)、オートパイロットなど

【レベル3より、自動運転システムが作動時は、すべての運転タスクを実行するということが前提】

●レベル3 条件付き運転自動化
システムが、すべての動的運転タスクを限定領域において実行。
作動継続が困難な場合は、システムの介入要求等に適切に応答。
安全に係る監視、対応の主体はシステム。ただし、作動継続が困難な場合はドライバー。

●レベル4 高度運転自動化
システムが、全ての動的運転タスク及び、作動継続が困難な場合への応答を限定領域において実行。
安全に係る監視、対応の主体はシステム。
ここでの「限定領域」とは、高速道路上や、大雨や雷雨、台風などシステム正常な動作を妨害するような環境。

●レベル5 完全運転自動化
システムが、全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を無制限に実行。
安全に係る監視、対応の主体はシステム。
いわゆる「無人運転」状態での走行可能な車。

 

日本の自動運転車はどこまで進化している?

海外の自動車メーカーでは、自動運転レベル2相当のシステムを持つドイツのアウディ上級セダン「Audi A8」や、法規制の影響でレベル3に近いレベル2システムを搭載したアメリカ・ゼネラル・モーター社の「Cadillac CT6」が運用されています。日本のメーカーは、海外より一歩出遅れており、全体的にようやくレベル2程度と言われており、国内大手メーカーのトヨタ、日産は、レベル3の実現を2020年に設定している状況です。

以下では、日本の各自動車メーカーが開発している自動運転車を、紹介します。

●ホンダセンシング/本田技研工業
「ホンダセンシング」は、本田技術研究所が開発している安全運転支援システムです。ミリ波レーダーと単眼カメラで情報を検知し、車の前方の状況を高い精度で認識します。衝突のリスクなどがある場合は、コントロールユニットを介して、ブレーキやステアリングを制御し、事故の回避や安全運転を支援します。

●プロパイロット/日産自動車
日産の「プロパイロット」には、「インテリジェントクルーズコントロール」と「ハンドル支援」の機能が搭載されています。インテリジェントクルーズコントロールは、運転者がセットした情報に基づいて判断する車間距離制御や、先行車が停止したときに自車も続いて停止する、先行車が発進したときは追従走行するなどの特徴があります。ハンドル支援では、「約50km/h以下では前方に車両がいる場合」という条件下で、車線中央付近を走行するようにステアリング制御をします。

●セーフティーセンス/トヨタ自動車
トヨタ自動車の「セーフティーセンス」では、「多様なシーンで安全予防を」をモットーに、衝突の回避や被害の軽減サポート、ドライバーミスや疲れのカバーなどで、事故を未然に防ぐ機能を備えて進化しています。その機能は、自動(被害軽減ブレーキ)、ハンドル操作サポート、車線はみ出しアラート、追従ドライブ支援機能、自動ハイビーム、標識読み取りディスプレイなど「多様性」に沿った機能となっています。

 

自動運転車の未来の展望と実現までの障壁

自動運転車の発展には、どのような展望があるのでしょうか。実現に至るまでの障壁と共に、まとめてみました。

【自動運転による未来の展望】
・人間の反応速度を上回る自動運転支援システムによる交通事故の減少
・人間ドライバーによる車間距離の詰めすぎ、わき見運転、ながら運転、乱暴運転事故の回避
・車間距離を自動に保つことで、交通流量が制御でき渋滞の緩和が期待できる
・カーシェアリングによる自動車総数の削減。
・自動駐車による物理的駐車スペースの削減、駐車場不足の緩和
・乗り心地の向上
・車両認識能力向上することによる車両盗難の減少
・過疎地において、バスやタクシーの乗務員の必要がなくなるため、人件費削減やドライバー不足の解消

【自動運転実現のための障壁や懸念材料】
・ソフトウエアをどこまで信頼できるか、ユーザーから信頼されるのか
・車間通信によって車載コンピュータに不正アクセスされるリスク
・いざというときにマニュアル運転を要した際のドライバーの運転技術・経験不足の懸念
・自動運転による事故が起きた場合の対処、対応、賠償責任など
・自動運転車の法的枠組みと政府規制の確立が必要
・天候の影響や自動運転専用のマップの必要性、自動運転無線通信の周波数帯域の確保などの現在の技術では限界があることも
・天候・路面状況及び、性能・機能の限界による不作動、誤作動
・危険物、爆発物を運んだ自動運転車の悪用
・純粋に車が好きな人、運転が好きな人の楽しみがなくなる

未来の展望では、社会が抱えている問題も含めて解決できる希望がふくらみますが、現状では社会的理解や技術的問題など、課題は山積みとなっています。本格的な実用には法規制なども必要となりますので、より一層、官民一体となった取り組みが必要となります。

 

CASEの「Autonomous」の取組みは、一般認知度が高いといえど、その詳細までは一般に知られてはいない印象があります。自動車業界だけでなく、今後、IT企業や通信業界、法令や自治体なども深くかかわってくるジャンルですので、セミナーでじっくり学んでみることをおすすめします。

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【参照情報】
国土交通省自動車局
>>>自動運転車の安全技術ガイドライン

コトバンク
>>>ジュネーブ道路交通条約

自動運転LAB
>>>CASEとは?何の略?意味は?自動運転、コネクテッド、シェアサービス、電動化

ITソリューション塾
>>>自動車産業に押し寄せるCASE、自動車産業を越えて変革を促す

ウィキペディア
>>>自動運転車

HONDA
>>>Honda SENSINGの機能

日産自動車
>>>プロパイロットついて

TOYOTA
>>>トヨタの安全技術とは?