パワハラ防止法案 パワハラによる企業ダメージとパワハラ対策“7つのメニュー”

パワーハラスメントは、被害者と加害者、それぞれ個人への被害だけにとどまらず、企業にもダメージを与えます。社内でパワハラが発生した時の対処法や企業ダメージ、パワハラ防止に企業ができる7つの対策メニューをご紹介します。

 

社内でパワハラが発覚したらどうする?

社内でパワハラが発覚した場合、その対処は速やかでなければいけません。被害者本人や周囲の人間からパワハラの相談や、申告があった時点で、実態調査をして事実関係を確認します。その調査は水面下で慎重に行う必要があり、パワハラが発生している周辺に知られないような配慮が必要です。行き過ぎた指導がパワハラに繋がるケースなのか、私情を挟んだものなのか、ストレスのはけ口としてのパワハラなのか、被害者、加害者の職場環境や職種などの特性を踏まえて調査します。適正な調査後に、パワハラであると認められた場合、就業規則に基づき、加害者の処分を検討します。

 

パワハラで問われる「企業の責任」とは?

大前提として、企業には従業員に対しての「使用者責任」や「安全配慮義務」があります。例えば、被害者がパワハラ被害で加害者と企業に向けて訴訟を起こした場合、企業は「使用者責任」を問われ、被害者から慰謝料を請求される場合があります。また、企業は、従業員に対して適切な職場環境を保つ義務があります。パワハラを把握しながら、加害者への指導や、配置換えなどを怠った場合は「安全配慮義務」に違反したとして、債務不履行の責任を問われる可能性もあります。このように、パワハラは単なる個人間、部署内でのトラブルではなく、時に、企業にもダメージを与える事態を招く恐れもあるのです。

 

パワハラ問題における企業のダメージについて

では、パワハラ問題が世間に明るみとなった場合、企業はどのようなダメージを受けるのでしょうか?

●企業内部でのダメージ
パワハラによる企業の内部ダメージで挙げられるのは、「生産性の低下」と「離職者の増加」です。パワハラ当事者はもちろん、日常的にパワハラを目撃していた従業員、パワハラのウワサを聞きつけた従業員などが、パワハラを恐れて萎縮し、仕事へのモチベーションが下がる、会社に対して不信感が募るなどで、起こりうる事態です。生産性の低下と離職者の増加は、やがて会社の経営難を引き起こすことも想定できるため、そのダメージは深刻です。

●企業外部へのダメージ
パワハラの実態がマスコミなどを通じて世間に明るみになった場合、企業名の公表による外部へのダメージもあります。クリーンなイメージだった企業が、一気にブラック認定され、SNS上などで炎上するケースも少なくありません。大手企業の場合は、ブランドが失墜し、売上などにもダイレクトに影響します。経済的損失が大きい上、信頼を回復するために、相応の時間を要することとなります。

 

企業が取り組むパワハラ対策7つのメニュー

厚生労働省では、企業でのパワハラを減らすための対策として、「パワハラ対策7つのメニュー」を周知しています。

(1)トップメッセージを出す
トップメッセージは、「企業の意思」です。「職場のパワーハラスメントはなくすべきである」という意思を、トップメッセージとして打ち出すことにより、社内での問題意識が高くなります。パワハラは重大な問題行為であり、従業員の人権や職場環境に関わる問題でもある、という意識を従業員の間で持つようになれば、社内でパワハラ問題の研修の実施や、相談窓口の設置などの具体的な取り組みをスムーズに進めることが可能となります。

(2)ルール決めを行う
パワハラについて従業員と企業の間で一体となり、パワハラ問題への取り組みを、労使協定や労働協約などでのルールを決めも有効な手段です。取り決めたルールは、就業規則や服務規律などの文書に定め、違反者には懲戒規則に基づく処分なども忘れずに取り決めます。パワハラを防止するための防止規程を定める場合には、就業規則に委任の根拠規定を設け「パワーハラスメント防止規程」を定めると、パワハラ防止の意識を高めることもできます。

(3)社内アンケートを実施し実態を把握する
社内でのパワハラの実態や、従業員のパワハラに対する意識を把握するために、社内アンケートを実施することも、パワハラ防止対策となります。アンケートは匿名で実施することがおすすめです。社内アンケートを実施するタイミングは、社内ルールの取り決めを行う前など、パワハラ対策に取り組む初期段階で実施することが効果的です。アンケートを実施することにより、表沙汰になりにくいパワハラの実態を上層部で把握することができるほか、職場内で話題となりやすいので、パワハラの抑止にも役立ちます。紙媒体でのアンケートのほか、電子ファイルや、Web上などでのアンケートなど、その方法はいろいろあります。

(4)従業員の教育をする
パワハラ防止対策に全社で取り組むには、研修やセミナーなどによる従業員の教育も重要です。従業員教育のための研修は、全社員で参加することに意味があります。一般従業員だけでなく、管理監督者も研修を受けます。研修を実施する場合は、管理監督者向けと一般従業員向けに分けることが効果的と言われていますが、規模が小さい企業の場合は、全従業員が一緒に受けること良いとされています。

(5)社内でパワハラについての周知・啓蒙を実施する
企業のトップメッセージによる組織の方針、ルールなどは、社内全体で周知・啓蒙しましょう。社内ポスターやID入れなどに入れるサイズのメッセージカードなどがよくある手法ですが、より確実なものとするために、企業で取り組んでいる各種の取り組みを目に見える形で実施し、従業員に取り組みを実感してもらうことが最も重要です。掲示物だけではリアルタイムの情報更新が難しいので、トップ、もしくは人事部門の組織長などから定期的にメッセージを発信すると効果が期待できます。相談窓口がある企業の場合は、相談窓口も併せて周知しましょう。

(6)相談窓口を設置する
パワハラを闇に葬らないためにも、従業員のための相談窓口を設置しましょう。前提として、相談者の秘密厳守、相談によって不利益な取り扱いを受けないこと、相談窓口でどのような対応するかを明確にし、誰もが利用しやすい相談窓口とすることが設置のポイントです。相談窓口のタイプには「「内部相談窓口」と「外部相談窓口」の2種類に分類されます。内部相談窓口は人事労務担当部門、コンプライアンス担当部門、法務部門、産業医、カウンセラー、労働組合の人間が相談員として対応します。外部相談窓口は、社会保険労務士、弁護士、メンタルヘルスや健康相談、ハラスメントなどの相談窓口代行の専門業者などに外注します。相談窓口を設置したら、従業員に気軽に利用してもらえるような周知の徹底もポイントです。

(7)再発防止のための取り組みを行う
パワハラが発覚した場合、企業の対応としては再発防止が求められます。パワハラの行為者を処分して終わるのではなく、同じことを繰り返さないためにも、職場環境や業務量の見直し、社内の人間関係の把握なども必要です。再発防止の研修を実施するには、社内だけでなく社外から講師を招く、外部のセミナーに参加するなどをして、社内全体でパワハラ防止に対する意識を高めるようにしましょう。

パワハラを防ぐために企業が取り組まなければいけないことは、山のようにあります。情報を整理するためにも、また、組織内で応用できるためにも、セミナーなどを受講することをお薦めします。

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【参考情報】
厚生労働省 あかるい職場応援団
「社内でパワハラ発生!人事担当の方」パワハラ対策7つのメニュー

残業代請求・弁護士相談広場
パワハラとはどういうもの?パワハラの実態と対処法

顧問弁護士相談広場
社内でのパワハラ従業員に訴えられたら?