内部統制が生まれた背景と日本の内部統制改革について

内部統制は米国の会計会社の不祥事によって生まれた言葉です。日本の内部統制改革は米国のSOX法に倣ったものではありますが同じではありません。ここでは、米国で内部統制が生まれた背景と、日本の内部統制改革について、簡単にご説明します。

 

「内部統制」という言葉が生まれた背景とSOX法

「内部統制」という言葉が生まれた背景には2001年から2002年にかけて米国で起こった会計不祥事が発端となっています。

2001年12月に米国のエンロンが、会計不祥事を起こして破たんし、続けてワールドコムという会社が、米国史上最大といわれる約4兆7000億円という負債を抱える会計不祥事を起こしました。ワールドコム社の不祥事は粉飾決済でしたが、これは社員の内部告発によって発覚したものです。企業内で、財務関係の不正がまかりとおっていたからこそ起こった事件ということになります。

米国経済に大打撃を与えてしまった二つの会計不祥事を二度と起こさないためにも、「企業の財務情報の透明性と正確性」を求め、確実にそれが実現できるようにする内部統制の仕組み」が、注目を集めるようになりました。

こうして生まれたのが、「Public Company Accounting Reform and Investor Protectoin Act of 2002」、略して「SOX法」と呼ばれるものです。「SOX法」とは、企業経営者を対象にした「企業改革法」で、第1章から第11章まであります。会計や財務の透明性を高め、監査制度を改革することを規定し、経営者の義務や罰則なども定めることにより、会計報告や財務報告を透明化、正確性が可視化され、各企業の内部統制が図れるようになったのです。

 

日本で実施された「内部統制改革」とは?

日本においても、上記で紹介した米国での巨額粉飾・不正監査事件が多発したのをきっかけに、不正や誤りを防止する仕組みが十分ではない上場企業が多いことがわかりました。それを受け、金融商品取引法において、内部統制の整備状況や有効性を評価した内部統制報告書を経営者が作成し、公認会計士等がそれを監査するという、二重責任の原則に基づいた内部統制改革の整備がはじまったのです。

日本ではSOX法のような法整備はありませんが、SOX法の第4章「財務ディスクロジャーの強化」に類似した制度を目指し、金融商品取引法にて、「経営者による評価・内部統制報告書の作成と監査による監査証明の義務化」が、2006年6月に制定されました。これを日本のSOX法「J-SOX法」と言われる内容とされる場合もありますが、「法」として定められているものではありません。

金融商品取引法第24条の4の4にて定められた内容によると、金融商品取引所に上場している企業は「有価証券報告書」と「内部統制報告書」を、事業年度ごとに内閣総理大臣に提出する制度を指します。ここに記されている「内部統制報告書」とは、会社の属する企業集団および当該会社に係る財務計算に関する書類、その他の情報の適正性を確保するために、必要な体制について評価した報告書」であり、提出する前には、監査法人または公認会計士の監査を受ける必要がある書類です。

そして金融商品取引法193条の2第2項では、第24条の4の4の規定に基づいて提出された報告書は、「その者と特別の利害関係のない公認会計士又は監査法人の監査証明をうけなければならない」と定められています。

このように「財務報告に関する開示の強化」を、金融商品取引法に制定することが、日本の内部統制改革の一つの流れとして始まったのです。

 

会社法で定められた内部統制とは?

「金融商品取引法」では、「財務報告に関する開示の強化」が定められましたが、内部統制に「会社法」でも内部統制に関する項目があります。

【会社法第362条4項6号、5項】
大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上の会社)は、「取締役の職務の執行が、法令及び定款に適合することを確保するための体制、その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして、法務省令で定める体制の整備」を、取締役会で決定しなければならないと定めています。また「会社法施行規則」の100条1項、3項において、下記のような体制を取るように促しています。

1 取締役の職務の遂行に関する情報の保存及び管理の体制
2 損失の危機の管理に関する規程その他の体制
3 取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保する体制
4 使用人の職務の執行が法令・定款に適合することを確保する体制
5 企業集団の業務の適正を確保する体制
6 監査役の監査が実効的に行われることを確保する体制

従業員をたくさん抱えた大会社では、管理の目が行き届かない事もありますので、内部統制のような、社内を一つにまとめるシステムがあることにより、不祥事を未然に防ぐ事が可能となると考えられています。

 

内部統制は中小企業にも必要なシステム

会社法で「大会社」と定義されているなら、中小企業は内部統制が必要でないかというと、そうではありません。中小企業の内部統制は、金融商品取引法にて定められている「善管注意義務」に該当します。

もともと善管注意義務とは、「善良な管理者の注意義務」と意味を持ち、「取締役や代表取締役などの経営者が常識的に払うべき注意義務」を指します。例えば、取締役が社内の会計などに目を光らせ、従業員に直接指示を与えたりなどをして統制を図り、社内コンプライアンスの遵守を促し、事故や違反を未然に防ぐことがその目的となります。

会社の大小はありますが、内部統制が「経営者が組織の業務をうまく進めるために社内統制する仕組み」である事に代わりはありません。すべての従業員が、スムーズに取り組めるようなルールの可視化とシステム構築が、重要となってきます。

 

もっと「内部統制」について学びたい方は、セミナーを受講することをお薦めします。
その道の専門家から学び、あなたの造詣を深めてください。

>>>最新のリスクマネジメント/内部統制セミナー情報はこちらから