<日本が目指すべき未来社会を示すSociety5.0【2】> Society5.0の「新しい価値創出」と実現へ向けての課題
Precision Agriculture and Agritech concept. Precision agriculture network icons on rice field.

IoTやAIを活用し、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムで、経済発展と社会的課題の解決を両立する「人間中心の社会」作ることを目的としたSociety5.0は、まるで遠い未来の夢物語のような話に聞こえますが、すでに現実社会で実現に向けて動き出しているプロジェクトです。Society5.0で生み出される「新しい価値創出」とは何か?実現に向けての課題はあるのか?Society5.0の可能性について、掘り下げてみました。

 

Society5.0が生み出す「新しい価値創出」とは?

2016年の第5期科学技術基本計画で提唱された「Society5.0」は、これまで人類が歩んできた「狩猟社会」「農耕社会」「工業社会」「情報社会」と続く社会の、次のステージとして用意されたものです。「IoTやAIなどのテクノロジーを駆使して新しい価値を創出する」とされていますが、具体的には、どのような分野で、どのような可能性を秘めているのでしょうか?「交通」「医療・介護」「ものづくり」「農業」「食品」など、人間の暮らしに必要な代表的な6つの分野でご説明いたします。

(1)交通
Society4.0では、例えば自動車で旅行に行く場合に、カーナビでの地図情報や渋滞情報、事前にインターネットで調べた観光地の情報などを活用していましたが、Society5.0になると、それらの情報は一つの大きなネットワークから、オンタイムで取得できるようになります。天気や渋滞情報を「知る」だけでなく、データーベースとAIを活用して、最適なプランニングや、ユーザーの好みに合わせた観光ルートの提供などが期待できます。それだけでなく、自動走行運転の開発で事故や渋滞を減らすCASEの考え、カーシェアリングと公共交通を組み合わせたシームレスな交通手段を提供するMaaSの取り組みなど、未来型交通社会の取り組みにも、Society5.0は深くかかわっています。

(2)医療・介護
ひと昔前はカルテの電子化が話題となりましたが、Society5.0の取り組みでは、個人ごとのリアルな生理計測データや、医療情報、感染情報、環境情報などのビッグデータを集めAIで解析、活用することを目指しています。例えば、介護用ロボットによる生活支援、病気の早期発見、リアルタイムの自動健康診断、などです。また、生理データと医療データを共有して、どこでも治療を受けられる遠隔医療の考えは、都市部と地方での医療格差解消にもつながります。

(3)ものづくり
日本の「ものづくり」は、世界でもトップクラスのクオリティを誇ります。Society5.0の「ものづくり」は、顧客や消費の需要、在庫情報、配送情報などのビッグデータをAIで解析することにより、工場間連携による生産の効率化、省人化による生産の効率化、各ニーズに対応した柔軟な生産計画や在庫管理が実現できます。このような管理体制が整えば、多品種少量生産の時代にも対応でき、顧客や消費者のニーズに沿った安価な品物を提供することにも繋がります。また、熟練技術の継承者問題も、匠の技術をモデル化することで解消を狙ったり、物流業界の不足には、異業種協調配送やトラックの隊列走行を実施して効率化を図るなど、業界全体の抱える課題をクリアしつつ、新たな価値の創造に挑んでいます。

(4)農業
農業の人手不足、農業従事者の高齢化問題は、日本が長年抱えている大きな課題です。Society5.0では、農業の抱える問題を解消しつつ、未来の農業社会を実現しようとしています。例えば、広大な土地をドローンで管理する、ロボットトラクタを導入して農作業を自動化するなどの取組みは、人手不足と高齢化の解消につながるほか、省力構高生産なスマート農業を実現させます。さらに、AIを活用した天候予測や収穫量の設定で、消費者のニーズに合わせた生産調整も実現できます。また、(1)で記した自動運転技術などと組み合わせての、農産物の自動配送なども視野に入れています。

(5)食品
日本人にとって「食」は、とくにこだわりの強い分野です。AIを導入することで、アレルギーや食品ロスなどの課題をクリアした食品社会を目指しています。例えば、アレルギーや病歴などの個人情報から、飲食店などで嗜好や健康状態に合った安全な食品の提案する、必要な分だけを発注・購入して食品ロスを削減する、生産者や店舗として、顧客ニーズにあった食品を生産・発注・在庫管理するなどです。特に、食品ロスはSDGsのゴールにもつながるため、多くの企業や自治体で取組みを始めています。

(6)防災
近年、日本では想定外の自然災害が発生し、個々の防災意識が高くなってきています。それと同時に、国を始め各地方自治体や企業の危機管理能力も問われています。人工衛星や気象レーダーによる気象状況の確認、人の立ち入れない地域へドローンを使った被災地観測、自動車に冠水や寸断、土砂災害情報などの道路被害情報やデータをリアルタイムに送信する、などを実施することで、被害を軽減し、社会の早期復帰が望めます。

 

Society5.0の目指す社会とプロジェクト推進のための5つの視点

経団連の実行計画によると、「Society5.0選定領域選対のための5つの視点」をもち、「官民プロジェクトとして推進するための5つの領域」を基盤として実行し、「Society5.0」の社会を目指すとしています。そのプロセスは以下の通りです。

・Society5.0領域選定のため「5つの視点」
(1)複雑化する社会課題の解決と、その先の未来創造を見据える
(2)デジタル化を通じた産業競争強化と、国民生活向上
(3)民間のみでは実現せず、官民、企業間の「協調」が必要
(4)研究開発にとどまらず、社会実装までを視野
(5)新しい社会の基盤となる

・官民プロジェクトとして推進するための「5つの領域」
(1)都市
(2)地方
(3)モノ・コト・サービス
(4)インフラ
(5)サイバー空間

・実現を目指すSociety5.0の世界
(1)人口減をものともしないスマートな社会
(2)高齢者や女性等、あらゆる個人が活躍できる社会
(3)サイバー・フィジカルいずれも安全・安心な社会
(4)都市と地方がつながり、あらゆる場所で快適に暮らせる社会
(5)環境と経済が料率する持続可能な社会

以上のように、Society5.0を実現するためには、局地的に手を付けるのではなく、広い視野を持ち、グローバルに共通する社会課題の解決と、産業創造による経済成長を両立させていることが重要と経団連では考えています。

 

Society5.0を実現するために立ちはだかる壁

Society5.0の実現には、抱えている課題に対して同じ危機感を持ち、官民プロジェクトとして課題に取り組むことが重要であることは前述しましたが、「実現に向けて乗り越えるべき壁」が、「官」「民」それぞれで存在することも事実です。

【官の壁】
・各省庁連携の壁
官民が一体となってプロジェクトに取組むのですから、当然、各省庁も連携しなければならないところです。各省庁で共通意識を図り、十分に意思の疎通が取れた連携を図っておく必要があります。

・国内外の人材確保の壁
Society5.0を実現するには、それぞれの分野に精通した学者や技術者が必要となります。まだまだ国内で人材が育っている状況とは言い難く、大型共同研究などを通した人材育成が必要です。

・法整備の壁
Society5.0は、「第5期科学技術基本法」で提唱されたものですが、科学の躍進に法整備が追い付いていません。サイバー犯罪対策はもちろん、ドローンに関する法整備や法規制、自動運転に関する法律などの法整備が急がれます。

【民の壁】
・異業種での協調
業種や業界を超えた企業間の協調や連携が、思わぬ発想やブーム、技術や商品など大きなイノベーションを起すことがあります。Society5.0を機会に業者間の壁を超えた新たな取組みが必要です。

・大学と研究開発法人との共創
「民」には、大学の研究機関も含まれます。大学と企業と政府の「産学官」連携も、Society5.0の実現には非常に有効です。

 

Society5.0を取り巻く課題はセミナーで!

Society5.0の実現には、提唱された目標に、現場の対応が追い付いていないことが大きな課題のようです。いざ実用する機会が訪れた時、ビジネスに生かすチャンスが発生したときに、Society5.0の知識は大きな武器となります。Society5.0やSDGsのセミナーを受講して新たな世界を知り得ましょう!

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【参照情報】
閣府 総合科学技術・イノベーション会議
>>>Society5.0実現に向けて

データのじかん
>>>超スマート社会を実現する!?「Society5.0」とはどんな社会?

デジタルトランスフォーメーションチャンネル
>>>日本政府が推奨するSociety5.0とは