<日本が目指すべき未来社会を示すSociety5.0【3】> Society5.0と地方創生「スマート自治体」は実現できるか
Precision Agriculture and Agritech concept. Precision agriculture network icons on rice field.

Society5.0のテーマは、「IoTやAIをなどのテクノロジーを駆使して新しい価値を創出する”人間中心の社会”を作ること」です。内閣府では、地域、年齢、性別、言語等による格差をなくし、多様なニーズ、潜在的なニーズに対して、きめ細やかに対応することによって「経済的発展」と「社会的課題の解決」の両立を実現できる社会を「超スマート社会」と名付け、Society5.0の実現に向けての取組みを、実施しています。その中で、各地方自治と連携して地域力を強化すべく、「Society5.0の地方へ」という持続可能な地域社会を目指すための「スマート自治体」という取組みが、注目されています。「スマート自治体」で、Society5.0はどのように生かされるのでしょうか?スマート自治体の概要、各自治体での取組例などを、ご紹介します。

 

スマート自治体とは?

総務省の「地方自治体における業務プロセス・システム標準化及びAI・ロボティクスの活用に関する研究会(通称:スマート自治体研究会)」によると、「スマート自治体」は以下のように定義されています。

「人口減少が深刻化しても自治体が持続可能なかたちで行政サービスを提供し続け、住民福祉の水準を維持し、職員を事務作業から解放して、職員でなければできない、より価値のある業務に注力し、ベテラン職員の経験をAI等に蓄積・代替えすることで団体の規模・能力や職員の経験年数に関わらず、ミスなく事務処理を行える自治体を目指します」

将来的に、日本の人口は減る一方と言われており、それによる将来の労働力の減少と税収の落ち込みなどが、懸念されています。人員、資金などの経営資源が制約される中で、自治体は多様化するニーズや、一定水準以上の行政サービスを維持しなければならない上に、社会保障費やインフラの修繕費などにも、対応しつづけなければなりません。これは地方、都市関係なしに訪れる危機であり、これを乗り越えるためには、各自治体単体でのサービス提供にこだわらずに、自治体間で連携したシステムの標準化とテクノロジーの活用で、業務を自動化・省力化・効率化する必要があります。

そこで総務省では、AIやITCを活用し、大規模災害に向けた防災・減災対策、インフラ整備などのハード面、AIやRPAを活用して行政手続きのオンライン化などのソフト面の両面で持続可能な質の高い行政サービスを提供できる「スマート自治体」を目指し、政府主導で全国の地方自治体へ働きかけています。

スマート自治体のポイントは「地域力強化」

総務省では、Society5.0によるスマート自治体を実現すべく、「総務省・地域力強化戦力本部」を設置して、地域力の強化を広報しています。Society5.0の技術は、「地域力強化」にどのように関わってくるのでしょうか?都市部の課題、地方の課題、総務省の取組みでご紹介します。

(1)都市部の課題
東京を中心とする首都圏の都市部では、社会における資本・資源・活動が特定の地域へ集中する、「一極集中問題」が課題となっています。一極集中問題では、巨大災害リスク、高齢者増加に伴う社会保障の問題、公共インフラの限界などが、挙げられます。これを解消するには、以下の対策が提案されています。

・流入人口の抑制
・企業の地方移転
・若年層高齢層等の移住促進

一極集中問題を解決するには、まず都心部に集中した人口を、地方へ散らす必要があります。例えば、都心部へ流入するきっかけの一つとして、大学進学や就職が指摘されています。東京以外でも、活動可能な部門の移転や企業の地方移転などを実現させることで、都心部への流入を抑止が期待できるとされています。

(2)地方の課題
都市部とは逆に、地方では人口の流出が課題となっています。都市部に流れる人口を地方に留める、そのためには、以下のような対策が提案されています。

・ICT、5G等の基盤整備・利活用による医療、教育等の生活基盤の充実
・行政サービスの高度化・効率化
・地域産業と連携した高等教育等の充実
・地域産業のレベルアップ、新産業の創出
・豊かなライフスタイルの提示
・地域へのプロ人材の移住促進など

(3)総務省の取組み
・総務大臣メールで全国地方知事首長と情報を共有
都市部の課題と地方の課題を見比べてみると明白ですが、地方のSociety5.0が充実することにより、都市部の課題も解決の糸口を見出すことができます。地域力を強化するためには、地域のリーダーである首長が、時代の変化やその潮流を認識し、「Society5.0時代の地方」をキーワードに、新たな施策を牽引していく必要があるとしています。「Society5.0時代の地方」を、全国地方自治体首長と共有すべく発信されるのが「総務大臣メール」です。総理大臣メールでは、Society5.0から創出される優良事例、例えば、スマート農業、AIやRPAによる行政効率化、多言語音声翻訳機などを紹介しています。

・スマート自治体の推進と自治体クラウドの導入
Society5.0時代の地方の取組みとしては、スマート自治体を展開するために、ICTインフラ整備を確実に推進することです。そのためには、システムを標準化・共同化した「自治体クラウド」を導入し、RPAを使った効率のいい事務処理や、各種行政手続きのオンライン化を目指します。自治体クラウドは、複数の自治体の情報システムの集約と共同利用が可能となるため、コストの削減や災害時の業務継続性の確保など、メリットが大きいことが特徴です。

・マイナンバー制度の徹底利用
自治体クラウドを導入するためには、マイナンバー制度の徹底活用が鍵となります。マイナンバーカードは、Society5.0時代の必須ツールともいわれており、マイナンバーカードを利用することにより、電子申請、電子本人確認、手数料の電子納付、子育て・介護・引っ越し、その他行政からのプッシュ型サービスなどの行政手続きが、スムーズに行うことが可能です。

・地域への関心醸成と働く場づくり
地方から人材が流出しないために、都市住民等と地域との継続的なつながりを創出する取組みや、地域の暮らしと仕事を体験する「ふるさとワーホリ」を実施するなど、地域への関心を高めることも必要です。もちろん、地域に人を根付かせるためには、「働く場」づくりも重要です。企業の地方進出、金機関などの連携による地域での雇用創出、テレワークやサテライトオフィスに代表される柔軟な働き方ができる環境の整備などが、新たなる課題となっています。

 

スマート自治体の取組事例

総務省のスマートシティプロジェクトでは、すでにスマート自治体に取組み、優良な事例を残している自治体があります。その一部をご紹介します。

【つくばスマートシティ:茨城県つくば市】
茨城県つくば市では、つくば市と筑波大学のほか、鹿島建設、KDDI、日本電気、日立製作所などの企業が参加した「つくばスマートシティ協議会」を中心に、公共交通の新たな社会サービスに取り組んでいます。自動車依存の高い地域性に着目し、自動車事故対策、高齢者の移動制約等に対するモビリティの在り方などを、テーマとしています。例えば、つくば駅と大学附属病院における水素燃料電池による自動運転シャトルバスを運行し、バス乗降時の顔認証による病院受付、診療費会計処理サービスを統合した「医療MaaS」や、筑波大学の学内バス乗降時の顔認証によるキャッシュレス決済の実装する「キャンパスMaaS」などがプランとして挙げられています。2019年度に、バス乗降時の顔認証によるキャッシュレス決済、並びに統合データーサービスの実証実験がスタートしました。

【益田市データ利活用型スマートシティプラットフォーム構築事業:島根県益田市見地区】
島根県益田市では、益田市が抱える課題(市民サービスの向上、人的負担の軽減、安全・安心な街づくり)の解決につながるデータ収集をはじめ、データと既存のプラットフォームデータを、分野横断的に活用することで、新サービスの創出による市民サービスの向上等に活用できるプラットフォームの構築と、誰でも参画できる体制整備などを構成する、「益田市データ利活用型スマートシティプラットフォーム構築事業」を実施予定です。シマネ益田電子株式会社と連携し、家電や人感センサー、公共交通、環境複合センサーから多用なデータを収集、蓄積し、データ利活用のためのスマートシティプラットフォームを構築し、新たなビジネスの創出や市民サービスの向上を図ります。

【「VIRTUAL SHIZUOKA」が率先するデータ循環型SMARTCITYコンソーシアム:静岡県】
静岡県では、下田市・熱海市とソフトバンク、COCN、東急電鉄等の企業と連携し『「VIRTUAL SHIZUOKA」が率先するデータ循環型SMARTCITYコンソーシアム』を提案しています。著しい人口減少・高齢化の進行による地元産業の担い手不足や、流通・交通サービスの衰退、急峻な地形による脆弱な公共交通網、災害時の交通インフラの分断を懸念し、自動運転による観光客の移動支援や、道路、河川等の災害対応の迅速化、インフラ維持管理などをテーマに取り組んでいます。2019年度は、下田エリアにおける観光型MaaSの実施と継続、同下田エリアにおけるデマンドタクシーの自動運転の実証実験などを実施しました。

 

Society5.0を活用したスマート自治体をビジネスに生かそう

スマート自治体の取組みは、自治体主体と思われがちですが、技術提供や新しい価値創出のためには企業の力も必要です。官民連携が謡われるSociety5.0のスマート自治体を、ビジネスの視点から見るためにもセミナーは有効です。有益なセミナーを探して、ぜひ受講してみてください。

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【参照情報】
内閣府(科学技術・イノベーション)
>>>スマートシティの創出・全国展開

>>>Society5.0時代の地方

総務省資料
>>>持続可能な地域社会の実現「Society5.0時代の地方」へ

スマートシティ官民連携プラットフォーム事務局
>>>スマートシティプロジェクト