<知っておきたい「業務委託契約」の労務管理と注意点【3】> トラブルを防ぐ「業務委託契約書」の作成ポイント

「業務委託」と言う働き方は、雇用契約とは違い自由度が高く「新しい働き方」の一つとして、社会的認知も高くなってきています。しかし、「業務委託」での働き方は自由度とは引き換えに「保障」がありません。労働法も通用しないため、受託者側がいいように使われてしまうという懸念があります。また、委任者となる企業側も、受託者に対し指揮命令権がないため、労務管理が難しいという課題も浮上しており、実際に委任側と受託側での労務トラブルが発生しているケースも多発しています。業務委託の労務トラブルを少しでも減らすためには、最初の業務委託契約をしっかり締結することが重要です。ここでは業務委託で失敗しないための、業務委託契約の内容や作成ポイントをまとめました。

 

業務委託契約が必要な理由

なぜ業務委託契約の締結が必要なのでしょうか。その理由を見てみましょう。

●業務委託契約とは?
業務委託契約は、委任者が受託者へ、自社の業務を委託する業務内容や、報酬などの条件を書面化したものです。書面に記載する項目は、法律で義務付けられていないため、契約書の内容は、業務内容や依頼内容によって異なります。

●書面での業務委託契約が必要な理由
業務委託契約が必要な理由は、委任者と受託者、その双方を守るためです。民法522条によると「契約」は口約束でも成立することになっているため、書面で業務委託契約を残す義務はありません。しかし、どんな契約でもそうですが、口約束はトラブルの元です。いざトラブルとなった場合に、言った言わないの水掛け論になることは明白です。委任者は自社の業務をまもるため、そして受託者は自分を守るために、業務委託契約を書面で残す必要があるのです。

 

業務委託契約に記載する内容

業務委託契約には、どのような内容を記載したら良いのでしょうか。委託する業務内容によって違いはありますが、業務内容に関わらず、業務委託契約に記載されることの多い項目をまとめました。

(1)契約の目的
「委託者に業務を委託するための契約であること」を記載する項目

(2)委託事業の内容
受託者へどのような業務を委託するかを具体的に記載する項目

(3)業務委託の遂行方法
受託者が業務の進め方について委託者に遵守して欲しい手順やルールを記載する項目

(4)再委託について
受託者が委託業務を「再委託するかどうか」について記載する項目

(5)契約期間
業務委託の具体的な期間や契約更新の有無などを記載する項目

(6)報酬について
報酬の基準や金額、報酬が発生するまでの期間などを記載する項目

(7)知的財産の帰属
業務中に発生した知的財産に関して、委託者、受託者のどちらに帰属するのかを記載する項目

(8)禁止事項
業務遂行に関して禁止事項などを具体的に記載する項目

(9)秘密保持について
情報漏洩のリスクがある場合、秘密保持の内容や範囲などをする項目。場合によっては、別途「秘密保持契約書」を作成することもある。

(10)損害賠償
どちらか一方が契約違反をした場合、「契約を解除する旨」を記載しておく項目

(11)契約の解除
どちらか一方が契約違反をした場合、「契約を解除できる旨」を記載する項目

(12)反社会的勢力の排除
どちらか一方が反社会的勢力に属する場合に、「契約を解除できる旨」を記載する項目

(13)合意管轄
法的トラブル等が発生した場合に、その解決場所(主に審理をする裁判所)を記載する項目

契約にあたっては法律で守られていないことが多い分、双方で事細かにすり合わせておく必要があります。一つ一つ丁寧に取り決めておくことをお薦めします。

 

業務委託契約書を作成する際の注意点

業務委託契約書に関する際、特に注意すべき点は以下の5つの項目です。

(1)受託する業務内容の記載について
契約書のはじめの部分で受託する素業務内容について具体的に記載します。業務内容の範囲をしっかり決めておかないと、成果物に対して委託者が納得しないケースや、想定外の業務で受託者が対応できないなどのトラブルに繋がります。業務内容や事業の範囲は確認しあいながら細かく設定しましょう。書ききれない内容や想定外の内容が発生しそうな場合は「関連業務並びに付随業務の一切を含むものとする」という一文や、「その他、甲乙間で別途合意した業務」という一文を加えておくことをお勧めします。

(2)報酬支払の種類とタイミングについて
報酬はとても重要な項目です。一般的なタイミングは「納品月の月末締め翌月支払い」です。業務委託での報酬は、以下のタイプに分類されます。

・毎月定額型…毎月定額の報酬を支払うタプ。清掃業務やコンサルティング業務など
・成果報酬型…成果によって報酬が変動するタイプ。営業代行業務や店舗運営業務など
・単発業務型…原則として一回きりの業務を委託する場合で、最初に報酬額を契約書に記載する。設計業務や開発業務など

(3)損害賠償について
損害賠償は、万が一損害が出てしまうようなトラブルに対しての項目です。受託者は無制限に賠償を請求されないように、責任の範囲、期間、金額の制限を設けておくことがポイントです。

(4)知的財産権について
知的財産権のトラブルは、業務委託でも多く見られます。システム開発や、ライティングの成果物などをはじめ、ほとんどの場合は、委託者へ知的財産権を譲渡する前提で契約を結びます。独自の技術や知識などで譲渡したくない知的財産権の場合は、委託者へ移転することを認めた上で、一定の範囲内で留保できるよう交渉してみることも可能です。

(5)秘密保持について
業務委託契約では、業務の過程で双方が入手した情報の流出や流用を防ぐための「秘密保持条項」も重要な取り決めです。委託者から受託者へ一定の内容を要求してくることが一般的です。受託者の方から、委託者へ渡す情報で、保持して欲しい秘密がある場合は、委託者側にも義務を盛り込んでおきましょう。

 

スムーズな業務委託契約をするためにもセミナーで業務委託契約について学んでおこう

業務委託契約書を交わす場合には、スムーズな業務委託契約の締結がポイントです。業務委託契約書に不備があると、今後の業務や、受託者側からの信頼にも関わります。委託者受託者双方にとって満足の行く契約ができるよう、まずは、委託者側で業務委託契約について知っておくことが必要です。Webセミナーなら、業務委託や業務委託契約に関する内容を繰り返し受講することができるので、利用しやすく便利です。下記サイトよりお探しください。

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【参照情報】
THE OWNER
>>>業務委託とは?会社側から見たメリットやデメリット、契約書作成時の注意点などを解説

開業freee
>>>その契約書リスクだらけじゃない?はじめての業務委託契約書で失敗しないためのポイント11選