<職場の安全と従業員を守る「労働安全衛生法【2】> 労働安全衛生法で事業者がやるべきこと

労働安全衛生法は、従業員の安全を守るための法律ですが、このような法律があっても「労災」がなくなることはありません。厚生労働省のHPによると、平成31年1月から令和元年12月までの労働災害による死亡者数は845人にも上っています。これでも、平成29年度と比べると133人減少しているとの事ですが、同じく厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」を見ると、あらゆる業種で様々な事例の事故やトラブルが発生していることが分かります。労災をなくすために、事業者は何をしたら良いのでしょうか?労働安全衛生法に則って「事業者がやるべきこと」をまとめました。

 

安全衛生管理をすることによる3つのメリット

労働安全衛生法において、事業者は労働安全衛生法に則り、労働衛生管理を行う義務が生じます。この義務を請け負うのは、元方事業者、例えば、直接の事業者が下請けだった場合、請負契約による注文者に対しても、一定の義務が求められる場合もあります。事業者が適切な安全衛生管理を実施することで、企業や従業員にどのようなメリットがあるのでしょうか?

(1)従業員のモチベーションが向上する
労働安全衛生法に則って、きちんと安全衛生管理を実施している企業は、現場の作業環境を常に最適化している「安全な企業」ということになります。無理なスケジュールや、無駄な作業、長時間の拘束などの劣悪な環境は、重大な事故を引き起こす原因になります。作業環境を最適化することで、仕事や職場環境に脅かさせることなく、安全な職場で安心して作業ができるということは、従業員のモチベーション向上につながります。

(2)生産性がアップする
従業員のモチベーションがアップし、安全で効率の良い作業ができるようになると、自ずと生産性もアップします。最適化された職場で、モチベーションの高い従業員がトラブルなく作業できれば、ロスも発生しないため、企業の利益にとってもプラスとなります。

(3)人手不足が解消する
危険な職場は離職率が高く、人手不足になりがちです。人手不足で生産性が下がり、業績が悪くなると、新しく人を雇い入れる余裕もなくなり、悪循環となります。安全衛生管理が徹底した職場なら、離職する人は少なくなり、また、募集をかけた際に良い人材が集まりやすくなる傾向にあります。安全をアピールすることは、企業イメージのアップにもつながり、メリットは大きいでしょう。

 

安全衛生管理をするために事業者がやるべきこと

事業者といっても、企業や工場、現場の規模により、安全衛生管理への取り組み方は変わってきます。安全衛生管理の例として、「従業員が50人を超える製造業」で実施する安全衛生管理への取組みをご紹介します。

(1)従業員の安全衛生教育
安全に作業するには、安全衛生を知ることが重要です。まずは実際に現場で働く従業員の安全衛生教育を徹底します。この教育は、従業員が50人以下の事業者でも実践できます。工場や建設現場等の危険有害業務に関わる場合は、安全のための資格取得や、特別教育などを学ぶ必要があります。

(2)ストレスチェックの実施
50人以上の従業員がいる企業では、一年に1回、従業員のストレスチェックを実施し、労働基準監督署へ結果を提出する義務があります。50人未満の企業の場合、ストレスチェックは努力義務とされていますが、厚生労働省ではできるだけ実施するように呼び掛けています。

(3)安全衛生の管理者などを選定する
50人以上の従業員がいる企業では、「安全管理者」「衛生管理者」「産業医」を選定しなければなりません。「50人以上の従業員」には、アルバイトやパートタイマー、契約社員なども含まれます。300人以上従業員がいる場合は「総括安全衛生管理者」も必要となります。また、従業員が50人以下の企業の場合は、「安全衛生推進者」を決めておきます。

(4)安全委員会・衛生委員会を設置する
50人以上の従業員がいる企業の場合、どのような業種であっても「衛生委員会」を設置しなければなりません。安全委員会に関しては、業種によって50人以上で必要なケースと、100人以上で必要なケースとで別れる場合があります。安全委員会、衛生員会ともに、月一回は開催することとされています。委員会を設置することにより、従業員の意見が吸い上げやすくなり、現場での不具合に対処しやすくなります。

 

これからの安全衛生管理に必要な2つの要素

厚生労働省が推進している「労働災害防止計画」では、メンタルヘルス対策にも力を入れています。過労による健康被害や、メンタルヘルスによる労災を防止するために必要な2つの要素をご紹介します。

●長時間労働者へのヒアリング
タイムカードによる記録や、パソコンの使用時間記録をチェックし、従業員の労働時間を把握し、その記録を3年間保存します。1か月あたり80時間を超える時間外・休日労働を行った従業員いる場合、疲労が蓄積している従業員については面接指導を行う必要があります。従業員が、産業医に駆け込めるように、相談しやすい環境をつくり、健康不安を抱えさせない職場づくりも推奨されています。

●産業保健機能の強化
「事業者は産業医を選任すべき理由が発生した日から14日以内に医師の中から産業医を専任し、厚生労働省令で定められた業務を実施させる必要がある」と労働安全衛生法第13条によって定められてます。さらに同法120条にて「これを実施しなければ50万円以下の罰金に処する」ともされています。罰則規定が設けられるほど、企業にとって産業医の存在が重んじられているか分かります。産業医は、従業員の健康診断やストレスチェックの結果、時間外労働が月80時間を超えた従業員の情報を、企業に報告し、従業員がストレスなく働くための環境づくりに努める必要があります。そして、衛生員会を設置している企業では、産業医が従業員の健康確保のための活動を行いやすいように、衛生委員会と情報を共有することで、産業保健機能を強化することができます。

 

従業員を守るための安全衛生管理をするならセミナーで!

従業員を守るためには、安全衛生管理を無視することはできません。適切な安全衛生管理を実施するためには、セミナーで労働安全衛生法について学んでおくことがポイントです。セミナーを受講して労働安全衛生法を学び、労災トラブルに関しても詳しく知っておきましょう。下記URLより、労働安全衛生法に関するセミナーをチェックしてみてください。

【参考】
電子政府の総合窓口 e-Gov
>>>労働安全衛生法

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>>>最新のビジネスセミナーを探す
※サイトにアクセスしたら、「労働安全衛生法」などでフリーワード検索してください。

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※サイトにアクセスしたら、「労働安全衛生法」などでフリーワード検索してください。

 

【参照情報】
ウィキペディア
>>>労働安全衛生法

Square
>>>労働安全衛生法とは?経営者がやるべきことを分かりやすく解説

産業医クラウド
>>>産業医の必要人数は?何人を設置する義務があるの?